職場におけるセクシュアルハラスメントは、それを未然に防止することが一番重要ですが、不幸にして発生した場合の処理も大切です。 2007年の均等法改正により、会社には労働契約上の義務として、労働者のプライバシーが侵害されることがないように、および労働者がその意に反して退職することがないように職場環境を整備する義務があるとして、会社がこれを怠った場合の債務不履行責任(民法第415条)を認めた裁判例があります。 また、セクシュアルハラスメントを防止するために、会社に対し、雇用管理上必要な措置を講じることが義務付けられています。 ※会社が相談への対応のための窓口を明確にしていると認められる例 (1) 相談に対応する担当者をあらかじめ定めておくこと (2) 相談に対応するための制度を設けること (3) 外部の機関に相談の対応を委託すること があげられます。 ※適切かつ迅速に対応することができるようにしていると認められる例 (1) 相談を受けた場合、人事部門との連携により円滑な対応を図ること (2) 相談への対応のためのマニュアルをあらかじめ作成し、 これに基づき対応すること があげられます。(均等法第11条第2項に 基づく指針3(2))
民事上は、個人に対して不法行為責任(民法第709条)、会社に対して不法行為責任(同法第715条)、債務不履行責任(同法第415条)を追求される場合があります。 セクシュアルハラスメントは、相手方の意に反する性的言動で、それに対する対応によって仕事を遂行する上で、一定の不利益を与え、就業環境を悪化させます。基本的には、「相手の意に反する」、「不快な」という受け手の主観的な尺度が基準になります。加害者に「悪気はなかった。」としても、それが受け手の意に反し、仕事上の悪影響を与えるものであれば、セクシュアルハラスメントとなります。
セクシュアルハラスメントは個人の問題にとどまらず職場環境の問題であり、労働者のために良好な職場環境を整備し提供するのは、会社の責任です。 セクシュアルハラスメントは職場の環境を悪化させ、働く人、特に女性の働く権利や人権を侵害し、直接的な不利益を与え、その結果、働き続けることができなくなるといった状況をもたらすものです。
また会社にとっても、職場秩序を乱し、業務の円滑な遂行を阻害するなどの損失をもたらす問題です。 セクシュアルハラスメントを未然に防止するための取組は、会社にとって必要とされることです。
1.全ての社員は、他の社員を業務上の対等なパートナーと認め、職場に おける健全な秩序ならびに協力関係を保持する義務を負うとともに、次に掲げる行為をしてはならない。
(1)むやみに身体に接触するなど、職場での性的な言動によって、 他人に不快な思いをさせることや職場の環境を悪くすること
(2)職務中の他の社員の業務に支障を与えるような性的関心を 示したり、性的な行為を仕掛けること。
(3)職責を利用して交際を強要したり、性的関係を強要すること
(4)その他、相手に不快感を与える性的な言動